夫は、これまで何度か転職をしています。
向上心が強く、「もっと成長したい」「もっと自分に合う場所があるかもしれない」と考えるタイプ。
私はというと、夫の転職回数について、それほど気にしたことがありませんでした。
もちろん、家族として収入が安定していることは大切です。
でも、それ以上に私は、
夫には、できるだけ楽しく働いていてほしい。
と思っています。
仕事をしている時間って、人生の中でもかなり長い。
その長い時間が、毎日ただ苦痛なものであってほしくない。
だから夫が「やってみたい」と思うことがあるなら、できるだけ応援したいと思っていました。
「一緒に立ち上げをやらないか」
当時、夫が働いていたのは、比較的新しい会社でした。
成長できる環境ではあった一方で、人の入れ替わりも多い職場だったように思います。
そんな中、以前から一緒に働いていた人から、
「新しく事業を始めるから、一緒に立ち上げを手伝ってほしい」
と声をかけてもらいました。
夫はもともと、いつか自分でも何かやってみたいという気持ちを持っていました。
だからこの話を聞いたとき、
「こんなチャンスはなかなかない。やってみたい」
と思ったそうです。
その頃、私のお腹には二人目の子どもがいました。
当然、不安がなかったわけではありません。
むしろ私は、
「立ち上げなんだから、きっと忙しいよ?」
と何度か夫に確認しました。
ただ、夫から聞いていた話では、仕事内容そのものはこれまでやってきたことと大きく変わらない。
夫自身も「大丈夫だと思う」と話していました。
正直、私は夫の仕事内容を細かく理解しているわけではありません。
それなら、
「そんなにやりたいなら、やってみたらいいんじゃない?」
と思いました。
実際に始まってみると、想像とは全然違った
ところが。
実際に働き始めてみると、想像していたようには進みませんでした。
立ち上げなので、当然トラブルもあります。
システム上の問題が起きて、本来なら自動でできるはずだった作業を、大量に手作業で対応しなければならなくなったこともありました。
毎日のように残業。
休日に仕事へ行くこともありました。
さらに、当初予定していた人員が揃わず、少ない人数で仕事を回さなければならなくなりました。
そして、一緒に仕事を始めた相手との人間関係もうまくいかなくなっていきました。
強い言い方や、夫が理不尽だと感じる対応が続き、日に日に疲弊していく夫。
家に帰ってくると、その日に会社であったことを私に話します。
最初は、
「それは大変だったね」
と聞いていました。
でも、それが毎日続く。
夫がしんどいのは分かる。
だから話は聞いてあげたい。
でも私も、だんだん苦しくなっていきました。
夫の仕事のストレスが、そのまま家の中にも入ってきているような感覚でした。
夫もボロボロ。
私もボロボロ。
今振り返っても、
「あの時期、本当にしんどかったな」
と思います。
何度も話し合って、3か月で辞めた
夫とは、何度も話をしました。
そして最終的に、夫はその会社を約3か月で退職しました。
たった3か月。
履歴書だけを見れば、決してプラスには見えない経歴だと思います。
実際、その後の転職活動では、この短期離職やこれまでの転職回数が影響したのか、書類選考で落ちることもたくさんありました。
でも。
私は今でも、
「あの転職をしなければよかった」
とは思っていません。
私も「立ち上げは忙しいよ」と言っていた
もちろん、反省点がなかったわけではありません。
私も転職前、
「立ち上げなんだから、普通の会社より大変なんじゃない?」
と夫に話していました。
夫自身も、実際に経験してみて、
「立ち上げるということを、もう少し具体的に考えておけばよかった」
と思う部分はあったようです。
仕事内容が同じだから大丈夫。
経験があるから大丈夫。
そう思っていても、
すでに出来上がっている場所で働くことと、一から作ることは全然違う。
これは実際にやってみて初めて分かったことでした。
でも私は、
「あのとき、もっと強く止めればよかった」
とは思いません。
どれだけ考えても、やってみなければ分からない
転職前に、夫婦でたくさん話し合うことはできました。
メリットとデメリットを書き出すこともできた。
ネットで調べることもできた。
誰かに相談することもできた。
それでも結局、
実際にその場所で働いた夫が、どう感じるかまでは分からなかった。
今の私たちは結果を知っています。
だから、
「あの会社には行かない方がよかったね」
と言うことは簡単です。
でも、それは結果論です。
あのときの夫にとっては、自分がいつかやりたいと思っていたことにつながる、大きなチャンスに見えていました。
もしあのとき私が、
「子どもも生まれるんだから、絶対やめて」
と止めていたら。
もしかすると数年後、
「あのとき挑戦していたら、うまくいっていたかもしれない」
という気持ちが、夫の中に残っていたかもしれません。
もちろん、本当にうまくいっていた可能性だってあります。
それは、誰にも分かりません。
だから私は、
やってみて「違った」と分かったことにも、意味があった
と思っています。
やらない後悔より、やる後悔
これは、私が昔から大切にしている考え方です。
やらない後悔より、やる後悔。
もちろん、何でも勢いだけでやればいいとは思っていません。
家族がいれば、自分一人の問題ではない。
お金のことも考えなければならない。
子どものこともある。
できる範囲で調べて、考えて、話し合うことは必要です。
でも、それでも最後は、
やってみなければ分からないことがある。
やってみて、
「やっぱり違った」
でもいい。
一度選んだからといって、ずっとその道を進み続けなければならないわけでもありません。
違うと思ったら、また選び直せばいい。
私はそう思っています。
夫が次の転職で一番大切にしたもの
この経験をして、夫の仕事に対する価値観はかなり変わりました。
以前の夫は、
「もっと稼ぎたい」
という気持ちが強かったと思います。
成長できること。
挑戦できること。
収入を上げること。
そういうものに魅力を感じていました。
でも、次の転職活動で夫が一番大切にしたのは、
「長く働けること」
でした。
会社として長く続いていること。
生活拠点が大きく変わる可能性が低いこと。
家族と過ごす時間を確保しやすいこと。
以前とは違う基準で、会社を探すようになりました。
「早く決める」より、「軸を変えない」
とはいえ、転職活動は簡単ではありませんでした。
夫はこれまでにも転職経験があり、さらに直近の会社を短期間で退職しています。
かなりの数の会社に応募しましたが、書類選考で落ちることも珍しくありませんでした。
子どもも生まれたばかり。
収入がない期間が長くなれば、当然家計にも影響します。
「もう、受かったところに決めた方がいいんじゃない?」
と思いたくなる状況でもありました。
それでも夫は、
「次は長く働けるところ」
という軸を大きく変えませんでした。
ありがたいことに、面接まで進むと話が進むことも多く、いくつかの会社から声をかけていただきました。
そしてその中から、今の会社を選びました。
無職だった時間は、家計だけ見ればマイナスだった
退職してから次の仕事が決まるまで、夫には仕事をしていない期間がありました。
当然、その間の給与はありません。
そして時間が経った今、
「あの期間の収入があったらなあ」
と思うことがないわけではありません。
家計簿だけを見れば、間違いなく収入が減った期間です。
でも、その時間があったから、
焦って次の会社を決めずに、仕事探しに専念できました。
そして、ちょうど二人目の子どもが生まれたばかりだったので、夫が家にいることで、育児にもたくさん参加してもらえました。
もちろん、
「無職期間があってよかった!」
と簡単に言える話ではありません。
お金の不安はありました。
それでも今振り返ると、
あの時間を「収入がなかった期間」だけで評価するのも違う気がしています。
「失敗した」で終わらせなくてもいい
立ち上げに参加したこと。
3か月で辞めたこと。
仕事をしていない期間ができたこと。
履歴書だけを見れば、
「遠回りした」
ように見えるかもしれません。
でも、その経験がなければ、
夫は「自分が仕事に何を求めているのか」を、ここまで真剣に考えなかったかもしれません。
稼ぐことを一番にするのか。
挑戦できることを一番にするのか。
長く働けることを一番にするのか。
どれが正解という話ではありません。
人によって違うし、同じ人でも人生の時期によって変わると思います。
夫の場合は、一度挑戦してみたからこそ、
「今の自分が大切にしたいのは、こっちだった」
と気づけた。
そう考えると、
あの3か月も、その後の仕事をしていなかった時間も、
全部が無駄だったとは思えません。
違ったら、また選び直せばいい
私は、
一度選んだものを、ずっと正解にし続けなくてもいい
と思っています。
仕事もそう。
暮らし方もそう。
物だってそう。
「これがいい」と思って選んだ。
やってみた。
でも、違った。
だったら、
また選び直せばいい。
最初から、自分にとっての正解を完璧に当てるなんて難しい。
むしろ、やってみて、
「これは私には合わない」
と一つずつ知っていくことで、
自分にとっての「ちょうどいい」が見えてくるのかもしれません。
あのときの転職は、結果だけを見ればうまくいきませんでした。
それでも私は、
夫が挑戦したことも、
3か月で辞めると決めたことも、
そのあと焦らず仕事を探したことも、
「しなければよかった」とは思っていません。
やらない後悔より、やる後悔。
やってみて違ったら、また考える。
そして、また選ぶ。
人生って、案外その繰り返しなのかもしれません。
私たちもまだ、
自分たちにちょうどいい働き方を探している途中です。


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